第422話『自分のアイデンティティーを守る』-【文学に革命をもたらしたレジェンド篇】グリム兄弟- - a podcast by TOKYO FM

from 2023-09-30T18:27

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ドイツに古くからある民間伝承を丁寧に集め、童話を文学の1ジャンルとして確立したレジェンドがいます。

グリム兄弟。

兄ヤーコプ・ルードヴィヒ・カール・グリムと、弟ヴィルヘルム・カール・グリムの二人は、協力し合い、『グリム童話』を世に送り出しました。

『赤ずきん』『シンデレラ』『ヘンゼルとグレーテル』『白雪姫』『ラプンツェル』など、その多くはディズニー映画のもとになり、全世界で最も知られる物語のひとつになったのです。

鬼才テリー・ギリアムは、2005年に『ブラザーズ・グリム』というファンタジー映画を撮りましたが、童話がこんなにも有名である一方、作品を紡いだグリム兄弟については、意外に知られていません。

彼らはなぜ、民間伝承に興味を持ち、気の遠くなるような作業を経て、童話に心血を注いだのでしょうか。

彼らが生きていた時代は、ドイツという国家はなく、ナポレオンひきいるフランス軍が侵攻、神聖ローマ帝国が崩壊していきました。

ドイツ民族である自分たちのアイデンティティーが戦争によって、脅かされる、そんな激動の渦の中にあったのです。

グリム兄弟は、優れた言語学者として『ドイツ語辞典』や『ドイツ語文法』を出版する一方、古くから伝わる民話を集め始めます。

『童話集』の前書きには、こんな言葉が書かれています。



「今こそ、昔から伝わる物語を、しっかりと心にとめる時であると思います。

なぜなら、昔話を覚えているひとがどんどん減っていくからです。

人間は、昔話から離れてはいけない。

そこには大切な教えが書かれているのです。

私たちは、家の隅や庭の暗がりに潜むものを守らなくてはいけないのです」



グリム童話集が刊行された1812年は、奇しくも、ナポレオン軍が大敗をきっした年でもありました。

先祖代々、口伝えで語り継がれてきた物語を、あたかも、古い箪笥の引き出しから取り出して、ほこりを払い、ほころびを直すかのように、再び世に出し、後世に残す。

そんな地道な作業こそ、彼らにとっての己を守る戦いだったのです。

貧しさに苦しみながらもドイツ民族の誇りのために生きた賢人、グリム兄弟が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

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